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えっ 玉露ですか?イメージ

えっ 玉露ですか?

板金 広 2021/05/01

臨床推論セミナー 落ち着けるはずが・・

82歳男性 全身がむずむずする

10年ほど前からむずむずする感じが年に数回ぐらいあった。1年ほど前から増悪し現在は毎日。
痛みはなし。全身がむずむずするが、最も感じるのはみぞおちのあたり。
1日中むずむずする、何か作業をしていると特に症状はなし。
最近、不眠にもなっている。5~6時間は眠れているらしいが、もっと寝たい。
ベシケアからベタニスに最近投薬変更されたが症状増悪し、中断したらやや改善した。
湯船に浸かっているときや、音楽を聴いてリラックスをしている時は症状なし。
ストレスを感じている時に辛くなる。
【内服薬】
メコバラミン、ノイロトロピン、ユリーフ、アトルバスタチン、シーピー、マイスリー、ベタニス
【生活歴】
タバコ(-)
アルコール(-)

鑑別診断をいろいろ上げてはみるが・・・

むずむず〇〇症候群??
上肢のむずむずが初発のむずむず症候群(restless arms synd.)
腹部、陰部、膀胱、腰部のむずむず症候群
むずむず頭症候群(Restless head synd.)? などの報告や
Restless abdomen 症候群などの報告があるらしいがしっくりこない。
internal tremorも考えたが・・ うーん
一応念のために鉄欠乏や頸椎MRIも正常  思考停止!

患者との何気ない雑談で・・・

患者さん:コーヒー好きなんです。1日3杯くらいですねど・・・お茶もよく飲みます。1日10杯くらいです。
担当医:とりあえずやめてみましょうか?

2週間後の外来で・・・
患者さん:10年来のムズムズよくなりました。よく眠れるようになりました

この患者さんのコーヒーとお茶

大匙5杯(通常大匙2杯)入れたドリップコーヒー3杯と玉露10杯

玉露のカフェイン量は半端なく高いですね。玉露を少量を舌で転がすように味わうらしいですが、この方は急須に入れて”ガバガバ”飲んでいたらしいです。1日推定でカフェイン量2000mg超えてますね。

カフェインについて調べてみた!

カフェインは用量依存的に人体に作用するらしい。低容量(250mg以下)では、覚醒、覚醒度、集中力、幸福感の増加(高揚感、安らぎ、快感の増加など)の望ましい作用が、高用量(500mg以上)では、緊張、神経質、不安、興奮、過敏性、吐き気、知覚異常、震え、発汗、動悸、落ち着きのなさ、場合によってはめまいがみられ、高濃度の亜致死量(約7-10mg/kg)では、個人差はあるものの、悪寒、潮紅、吐き気、頭痛、動悸、震えなどの症状を引き起こすことがある。
 一般的に400mg以下の摂取が望ましいとされるが、個人差が非常に大きい。

そういえば瞬察で坂本先生にも教わったはず

 21才の女性が試験勉強中に嘔吐で救急受診した症例でした、吐物がエナジードリンクの臭いしたことから診断。
 エナジードリンクやエスタロンモカなどの薬剤の怖さを教えていただきました。

   21世紀 適々斎塾Webinar 瞬察 坂本先生スライドより

慢性中毒では

坂本先生の例は急性中毒ですが、玉露の患者さんは慢性中毒です。慢性中毒も報告があり、低カリウム血症、食欲不振、吐き気、嘔吐、動悸、発作、不整脈などがみられるようです。これらは重度の慢性不安と区別がつかないこともあるようです。慢性中毒はには1日あたり1000~1500mgの摂取で発症します

診断がつきにくい患者では、”薬剤をまず除外”が鉄則ですが、サプリメントだけではなく、コーヒーやお茶などの嗜好品もチェックすべきことを学びました。臨床は奥が深いですね。

レポートしたセミナー : 臨床推論セミナー